憧れの地は、歩いてこない、だから歩いて行くんだよ、と誰が言ったか知らないが、蔦屋田雑文堂の憧れの地のひとつに、隠岐があるです。島根県の隠岐ね。私、「謎の歴史」マニアでして、記紀辺りあるいは民俗伝説なんてのが、三度の飯より大好きなんざんす。で、隠岐も謎の歴史というよりも、そういう人と縁の深い場所でして、いつかは行かねばと思っておりました。願えば何事も叶う也。この度、行く機会に恵まれました。いっひっひ。隠岐は二つの島から形成されとりまして、島前(どうぜん)と島後(どうご)があるんです。島後の方が丸こくて大きい。ちなみに空港はこちらにあります。有名な国賀海岸があるのは、島前。書き出すと、いっぱいあるんだが、このコーナー、あんまり書きすぎると画面が文字文字くんになるので、スペースの都合上、ネタをピックアップいたします。
さて、ピックアップするのは、島前。ここで宿泊した宿のご主人がめちゃめちゃ素敵でね。海の男、かくあるべし。彼は、宿の「板長」兼「遊覧船船長」兼「送迎」兼「船の設計者」というまぁ山ほど仕事をこなす人です。この人が宿に着くなり、にこっと笑いながら、「時間あるなら国賀、行きますか」といって、MYクルーザーでごわーっと、一直線。国賀海岸てのは、断崖絶壁でその下に日本海が果てし無く続いているという、勇壮膨大な自然美である。ここ、火曜サスペンスドラマなんかに出てるよ。普段は牛とか馬がのんびり草を食んでいる。青い空、青い海、緑の草。美しいコントラスト。いやぁ、もう自然派大感激の場所なんざんすが、これが海から見上げるとさらにものすごいことになる。泣けてくる。日本にはまだこんなすごいところがあるんだ、と誇らしく思っちゃうね。天まで届けよとばかりに、ざばっと海から突き出した陸、即ち岩板が、どこまでも続く。地球を遊ぶのはオーストラリアに限ると思っていたが、ここだって十分、地球の力技堪能だ。打ち寄せる波が、気が遠くなるような年月をかけて砕いた無数の洞窟は、まるで上質な古代遺跡。自然には、人間、どうやっても勝てません。


「隠岐はね、海あってこそ、隠岐。別に他の場所と同じことして、お客さん集めなくても、ここには海の恵みがふんだんにある。それを守って、また次の世代に伝えなくちゃいかなくちゃいかんと思いますね」。夜、船長と一緒に、船長自慢の吟醸酒を飲みながら、話に花が咲いた。「海の怖さ、素晴らしさを知ることが隠岐に生まれた子には大切なんです。私はわが子に、海で遊ぶ楽しさも、海の怖さも教えたい。それを知っていれば、必ず、ここへ帰りたくなると思うんです。海が好きなら、必ず、ここへ帰ってくる。」いいでしょ、この言葉。過疎化は多分、この島の人にとっても問題ではあると思う。若い人が都会に憧れるのは、わかる。でも、その心の底に故郷の素晴らしさを知る心があれば、こんなにまで寂しい過疎化はあったろうか?ざくざくと山を切り開く宅地造成、田園の中にいきなり建つモダンな謎のホールや文化会館、ぼりぼりと珊瑚を食いつくし、海の生き物の住処を奪う埋め立て、日本なのに、なぜか外国の名所をモチーフとした見どころが建つ。何やってんだか。まぁ、いろいろそうしなればならない屁理屈はあるんでしょうが、やっぱり単純に見れば、「あほちゃうけ」で終わるねん。あぁ、紙面に限界がでてきました。しかし、このまま「其の弐」を読んでけれ。